アスベスト調査の必要性を築年数で判断|対象となる建物とは
建物の解体やリフォームを検討する際、「アスベスト調査は何年以降の建物なら不要なのか」と疑問に感じる方は少なくありません。アスベスト(石綿)は、かつて断熱性や耐火性に優れた建材として広く使用されていましたが、健康被害との関連が明らかになったことで、使用や取り扱いに関する規制が段階的に強化されてきました。
現在では、解体工事や改修工事を行う前に、アスベストの事前調査を実施することが法律で義務付けられています。調査を行わずに工事を進めた場合、法令違反として罰則を受ける可能性もあります。一方で、建物の着工時期によってはアスベスト含有建材が使用されていないと判断できるケースもあり、築年数は調査の必要性を見極める重要なポイントとなります。
本記事では、アスベスト調査が必要となる建物の年代別の判断基準をはじめ、事前調査の流れや調査費用の目安、注意すべきポイントについて詳しく解説します。
アスベスト事前調査の法的義務化と制度の背景
アスベスト(石綿)は、優れた耐火性や断熱性、防音性能を持つことから、かつては住宅やビルなど多くの建築物に使用されていました。特に1950年代から1990年代にかけては、建材として広く普及していましたが、後にアスベスト粉じんを吸い込むことで、中皮腫や肺がんなどの重大な健康被害を引き起こす危険性が判明しました。そのため、国はアスベストに関する規制を段階的に強化しています。大きな転換点となったのが、2006年(平成18年)9月1日です。この日以降、アスベストを0.1%を超えて含有する製品については、製造・輸入・使用が全面的に禁止されました。このため、2006年9月以降に着工された建築物については、アスベスト含有建材が使用されている可能性は比較的低いと考えられています。しかし、それ以前に建てられた建物には、現在もアスベスト含有建材が残っている可能性があるため、解体工事やリフォーム工事を行う際には事前確認が欠かせません。こうした状況を受け、2020年には大気汚染防止法および石綿障害予防規則(石綿則)が改正され、2021年4月1日からは、原則としてすべての解体・改修工事でアスベストの事前調査が義務化されました。さらに、2023年10月1日以降は、「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者による調査の実施が必須となっています。万が一、調査結果の報告を怠ったり、虚偽の内容を届け出たりした場合には、大気汚染防止法に基づき30万円以下の罰金が科される可能性があります。このように、アスベスト調査は健康被害を防止するためだけでなく、法令を遵守して安全に工事を進めるためにも重要な手続きとなっています。
事前調査を実施しなくてもよいケースとは
アスベストの事前調査は、原則としてすべての解体工事・改修工事で実施する必要がありますが、一部には調査が不要と判断されるケースもあります。
例えば、工事対象となる部分が木材・金属・石材・ガラスなど、アスベストが含まれていないことが明らかな材料のみで構成されている場合には、調査を省略できる可能性があります。
また、2006年(平成18年)9月1日以降に着工された建物については、設計図書や確認申請書類などで着工時期を確認できれば、書面調査のみで対応できるケースがあります。この場合、現地での目視確認や分析調査まで実施する必要はありません。
ただし、「2006年以降の建物だから」という理由だけで、何の確認もせずに調査を省略することは認められていません。必ず図面や書類などによる確認を行い、その記録を残しておくことが重要です。
アスベスト調査は何年以降の建物で簡略化可能?
アスベスト調査を行ううえで、大きな判断基準となるのが「2006年(平成18年)9月1日」です。この日以降、アスベストを一定以上含む製品の製造・輸入・使用が全面的に禁止されたため、2006年9月1日以降に着工した建築物については、基本的にアスベスト含有建材は使用されていないと考えられています。
しかし、2006年9月以降に建てられた建物であっても、アスベストの事前調査自体が不要になるわけではありません。まずは、設計図書や建築確認済証などの資料を用いて、建物の着工日を確認する「書面調査」を実施する必要があります。
この書面調査によって、着工日が2006年9月1日以降であることを客観的に確認できた場合には、現地での目視確認や建材サンプルの分析調査など、追加の調査を省略することが可能になります。
2006年以前の建築物はどのような調査が必要?
2006年(平成18年)9月1日より前に着工された建物については、アスベスト含有建材が使用されている可能性があるため、より慎重な調査対応が求められます。
まずは設計図書や仕様書などを用いた書面調査を実施し、その後、現地における目視確認を行います。これらの一次調査でアスベストの有無が明確に判断できない場合には、建材の一部を採取し、専門の分析機関で成分を調べる「分析調査」を実施する必要があります。
特に1950年代から1980年代にかけて建てられた建築物では、吹付けアスベストや石綿含有の保温材・耐火被覆材など、リスクの高い建材が使用されている可能性が高く、より入念な調査が不可欠とされています。
築年数によるアスベストリスクの違いとは
アスベストのリスクレベルとその違いを解説
アスベスト含有建材は、繊維が空気中に飛散しやすいかどうか(発じん性)の程度によって、一般的にレベル1からレベル3までの3段階に分類されています。この分類は、解体・改修工事における作業方法や安全対策の内容、さらには除去費用にも大きく関わるため、事前調査の段階で正確に把握することが重要です。
レベル1は最も危険性が高い区分で、主に吹き付けアスベストが該当します。非常に脆く、少しの衝撃や経年劣化によってもアスベスト繊維が大量に飛散する恐れがあります。そのため除去作業では、作業場所の隔離や負圧除じん装置の設置など、厳格な飛散防止措置が必要になります。主に昭和30年代から50年代前半に建てられた建築物で、鉄骨の耐火被覆材や機械室の吸音材として使用されているケースが多く見られます。
レベル2は、配管の保温材や断熱材などに使用される石綿含有建材が該当します。内部に空気を多く含む構造のため比較的柔らかく、破損するとアスベスト繊維が飛散しやすい特徴があります。このため、除去作業においてはレベル1と同様に、隔離空間の確保など厳重な対策が求められます。
レベル3は、スレート材や成形板、ビニル床タイルなどの硬質な建材が中心です。アスベストがセメントなどの素材に固められているため、通常の使用状態では繊維が飛散しにくい構造となっています。ただし、解体や切断、破砕といった作業時には飛散する可能性があるため、湿潤化や適切な作業方法による飛散防止対策が必要となります。
なぜ有資格者による調査が必要なのか
2023年10月以降、建築物のアスベスト事前調査については、一定の資格を有する調査者が実施することが義務化されています。対象となる資格には、「特定建築物石綿含有建材調査者」「一般建築物石綿含有建材調査者」「一戸建て等石綿含有建材調査者」があり、いずれかの資格保有者が調査を担当する必要があります。
これらの有資格者は、建材の種類や施工年代などの情報をもとに、アスベスト含有の可能性を専門的に判断する知識と技能を備えています。そのため、より正確で信頼性の高い調査が可能となります。
一方で、無資格者による調査は法令違反に該当するだけでなく、アスベストの見落としによる健康被害や工事上のリスクを引き起こす可能性もあります。安全性と法令遵守の観点からも、必ず有資格者へ調査を依頼することが重要です。
アスベスト事前調査の手順と費用の目安
アスベストの事前調査は、「書面調査」「現地での目視調査」「分析調査」という3つの工程で段階的に実施されます。
まず書面調査では、設計図書や建築確認済証、過去の修繕・改修履歴などの資料をもとに、建物に使用されている建材の種類やアスベスト含有の可能性を確認します。
続いて行われる現地目視調査では、調査担当者が実際に現場へ赴き、建材の状態や使用箇所を直接確認し、書類情報との整合性をチェックします。
それでもアスベストの有無が特定できない場合には、対象となる建材の一部を採取し、専門の分析機関にて成分分析を行う「分析調査」を実施し、含有の有無を科学的に判断します。
費用の目安としては、書面調査がおおよそ1万〜3万円程度、現地目視調査が2万〜5万円程度、分析調査は1検体あたり約1.1万〜2万円程度が相場とされています。
一般的な戸建て住宅の場合、事前調査全体で5万〜20万円程度に収まるケースが多い一方、ビルや工場など規模の大きい建物では調査範囲が広がるため、数十万円以上になることもあります。
調査結果の報告義務
2022年4月1日以降、一定規模以上の建設工事については、アスベスト事前調査の結果を所管行政機関へ報告することが義務化されています。解体工事の場合は、請負金額が100万円以上、または延べ床面積が80㎡以上の工事が対象となります。
これらの対象工事では、調査結果を労働基準監督署および都道府県などへ提出する必要があり、報告は原則として「石綿事前調査結果報告システム」を利用した電子申請で行われます。
なお、報告義務を怠った場合には法令に基づく罰則の対象となる可能性があるため、解体業者や工事の発注者は、事前調査と併せて報告義務についても正しく理解し、確実に対応することが重要です。
まとめ
アスベスト調査は「いつ建てられた建物か」によって、その内容が大きく変わります。2006年(平成18年)9月1日以降に着工された建物であれば、基本的には書面調査で着工日の確認を行うことで調査を完了できるケースが多くなっています。
一方、それ以前に建てられた建物では事情が異なります。特に1950年代から1980年代にかけて建設された建物は、アスベスト含有建材が使用されている可能性が高く、書類確認だけでは判断できないため、現地での目視調査や必要に応じた分析調査まで含めた、より慎重な対応が求められます。
また、2021年の法改正によって、すべての解体・改修工事においてアスベスト事前調査が義務化され、さらに2023年10月以降は、有資格者による調査の実施が必須となりました。つまり現在では、「調べるかどうか」ではなく「どう正確に調べるか」が重要になっています。
安全な解体工事を実現するためには、経験と資格を持つ専門業者に調査を依頼し、その結果に基づいて適切な対策を講じることが欠かせません。

