1. アスベストとは?
アスベストは、天然に存在する鉱物(鉱石)です。これは非常に細かい繊維の形をしており、強度が強く、熱にも強い性質を持っています。このため、かつては建材や断熱材、車のブレーキ、さらには衣服などにも使われていました。
例えば、アスベストは以下のような製品に使われていました。
- 建材(天井や壁の材料)
- 屋根材
- 断熱材(お風呂や暖房の周り)
- 自動車のブレーキやクラッチ
アスベストがもたらす危険性が明らかになるまで、この鉱物は「便利な素材」として広く使われていたのです。
2. アスベストが危険な理由
アスベスト自体は見た目には特に危険なものには見えませんが、実はその繊維が空気中に舞い上がると、非常に危険になります。この微細なアスベストの繊維を吸い込んでしまうことが問題の原因です。
アスベストの繊維は非常に細かいため、目で見ることができません。もし、その繊維が空気中に浮いていて私たちが吸い込んでしまうとそれが体の中に入ってしまいます。特に、肺や胸に影響を与えることが分かっています。
3. アスベストによる健康への影響
アスベストの繊維を吸い込むことによって、以下のような病気が引き起こされることがあります。
(1) 肺がん
アスベストの繊維が肺に入ると、肺が炎症を起こし、最終的にがんを引き起こすことがあります。アスベストによる肺がんは、他の原因による肺がんよりも発症するまでに時間がかかることが多いです。アスベストにさらされた人が肺がんを発症するまでには、20年から50年かかることもあります。
(2) アスベスト関連疾患(中皮腫)
中皮腫(ちゅうひしゅ)は、アスベストが原因で発症する特殊な種類のがんです。中皮という部位にがん細胞ができ特に胸の内側の膜(胸膜)や腹部の膜(腹膜)に多く見られます。中皮腫もまた、アスベストにさらされた後、数十年を経て発症します。中皮腫は非常に進行が早く治療が難しいことで知られています。
(3) じん肺(じんぱい)
アスベストの繊維を長期間吸い込むことで、肺にじん肺(粉塵で肺が傷つく病気)が起こることもあります。これは、アスベストが肺の中で繊維のように残り、肺の組織を傷つけるためです。じん肺は呼吸困難や咳を引き起こし、進行すると生活に支障をきたすこともあります。
4. アスベストが使われた場所とその影響
アスベストは、20世紀の多くの建物や施設に使用されていました。特に1950年代から1980年代にかけて、日本を含む多くの国々で多く使用されていました。学校や病院、オフィスビル、そして住宅にも使用されたことがありました。これらの建物では、アスベストの繊維が空気中に漏れ出すことがあり、住民や作業員が健康被害を受ける原因となっていました。
- 学校
昔の学校の教室や体育館などには、アスベストを使った天井材や壁材が使われていたことがありました。アスベストが古くなったり、傷ついたりすると、その繊維が空気中に舞い上がり、そこで生活している子どもたちが吸い込むことになります。これが健康に悪影響を与える原因となります。
- 仕事場
アスベストが使われていた場所で働いていた人たちも、健康リスクにさらされていました。特に建設業や工場でアスベストを取り扱っていた作業員は、アスベストを吸い込むリスクが高かったため病気にかかることが多かったのです。
5. アスベストの規制と現在
アスベストの危険性が明らかになったことで、多くの国では使用を禁止または制限する法律を作りました。日本でも、アスベストを含む製品の使用が1990年代後半から2000年代にかけて段階的に規制され、現在ではほとんど使用されていません。
ただし、今でも古い建物や施設の中にはアスベストが残っていることがあります。例えば、古い学校や工場などでは、アスベストが使用されている可能性があるため取り壊し作業やリフォームの際に、十分な注意が必要です。アスベストを取り扱う作業は、専門の業者に依頼し、適切な方法で処理することが求められます。
6. アスベストの安全な取り扱い
もし古い建物にアスベストが含まれている可能性がある場合、その取り扱いは非常に慎重に行う必要があります。アスベストを取り扱う際には、以下のような注意点があります。
- 専門業者に依頼する:アスベストを取り扱う場合、必ず専門業者に依頼することが重要です。専門家は適切な防護策を講じ、健康被害を避ける方法を知っています。
- アスベストが傷つかないようにする:もしアスベストが含まれている建材を傷つけてしまうと、繊維が空気中に舞い上がる危険性が高まります。触らないようにすることが基本です。
- 適切な保護具を使用する:もし、アスベストが取り扱われる場所で作業する必要がある場合は、防塵マスクや保護服を着用し、アスベストの繊維が体内に入らないようにする。
7.まとめ
アスベストは、かつては便利な材料として広く使用されていましたが、その危険性が明らかになり、現在では多くの国で使用が禁止されています。アスベストの繊維は非常に細かく、肺に入り込むと深刻な健康問題を引き起こすことがあります。特に肺がんや中皮腫といった病気のリスクが高まります。そのため、アスベストを取り扱う際には十分な注意が必要です。
私たちの身の回りには、まだアスベストが使われている建物や物が残っていることがあります。そのため、アスベストに触れないように気をつけることが重要です。そしてもしアスベストの取り扱いが必要な場合は必ず専門家に依頼して、適切な方法で対処することが求められます。